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エビちゃん日記
- 雑記その他
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昨今はほとんど報道されなくなりましたが、
新型コロナ感染者が爆増しているようです。
いま11波なんだとか。
皆さま、慢心することなく
気をつけてお過ごしくださいますよう。
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函南町内に一軒あった本屋さんが
閉店となり、
ある日突然、空き地にかわった。
いや、突如更地になるはずはないので、
「気がつけば-」が正しいか。
町から本屋さんがなくなるというのは、
「寂しい」を通り越して、
「ヤバい」と感じる。
みんな本を読まなくなったのか‥
いや、
そういう傾向もあるかもしれないが、
この光景は時代の変化によるものだ。
欲しいと思った書籍は、
ネットで注文すれば翌日に届く。
週刊誌などはコンビニで買える。
僕自身、
コンビニに置いてない月刊誌とか、
売れてる新刊を買う以外は、
ほぼ本屋さんには入らなくなった。
だいたい、欲しいと思う本は
街の本屋にはないことが多い。
売れ筋の単行本に雑誌やコミック・
実用書に文庫などをただ並べるだけでは
「街の本屋さん」はもはや
生き残れなくなってしまったようだ。
しかしこの現象は
「しょうがない」という以上に、
なんか文化の後退現象のようにも
ようにも感じられ、
寂しく思うのは僕だけだろうか。
人が入りたくなる・読みたくなる・
考えたくなる、そんな仕掛けが
「街の本屋さん」から
生まれてくることを願ってやまない。
上の空き地は、
何に生まれ変わるのだろうか。
それともこのまま荒れてゆくのか‥‥
そんな御託を並べつつ白状すれば、
じつはこの本もネットで買った。
『土と内蔵』。
で、前回の続き。
市民科学研究室主催の
「ブックトーク 語っていいとも」
で喋った内容は、
だいたいこんな感じ。
僕は農家ではない。
生物学や土壌学を学んだわけでもない。
ただ「大地を守る会」という
有機農産物の流通組織で働くなかで、
生産者に教えてもらったり、
講演を聞いたり本を読んだりしながら、
学んできた素人である。
有機農業に関する本は、
古典といわれる名著から、
専門的な技術書、ガイドブック的な
入門書まで、かなり漁ってきた。
もちろん網羅はできてないし、
「だいたいこうだろう」程度にしか
理解できなかったものも多い。
そんな自分が、
今回のお話を頂戴して、
「有機農業に関する入門書を一冊」
という視点で、あれこれ
背表紙を眺めながら思案して、
たどり着いたのが、これだった。
本書の要点を
(私なりに)ひと言で表すなら-
土こそがすべての生命の源であり、
そのすべてにおいて微生物が関与している。
人の身体も同じであり、私たちは地球上の
微生物のネットワークによって
生かされている。
そういうことに尽きるかと思う。
冒頭の書き出しから、引き込まれる。
地球が太陽のまわりを回っていることを
発見したときと同じくらい
輝かしい科学革命の時代を、
私たちは生きている。
けれども現在進行中の革命は、
巨大な天体ではなく、
小さすぎて肉眼では見えない生物が中心だ。
相次ぐ新たな発見によって、
地下の、私たちの体内の、そして
文字通り地球上到るところの生命について、
急速に明らかになっている。
科学者たちが見つけているのは、
私たちの知る世界が、
これまでほとんど見過ごされてきた
世界の上に築かれているということだ。
そして、微生物学と医学、土壌生態学が今、
「驚くほどよく似た発見をしている」と、
著者は語り始める。
構成は、専門的な解説だけでなく、
物語的な展開にもなっていて、
夫妻がシアトル北部の庭つきの古い家を
購入したことから始まる。
念願の庭を手に入れたアン夫人は、
勇んで家庭菜園を始めようとするが、
薄い表層の下は氷礫土の層に覆われていて、
植物を育てられる状態ではなかった。
そこで考えたアン夫人は
大量の有機物をぶっ込み始める。
するとどうなっていったか、
というふうに展開していく。
こういう実体験から入るところがまず、
専門書にはないツカミになっている。
第2章からは、
地球上の至る所に存在する微生物の働き
について解説されていく。
高層大気から胃の中まで、
生命のあるところに必ずいる微生物の話。
それらが地球の酸素循環や
窒素循環を動かしていること。
その世界に入っていく前段として、
人がどう自然を見つめ
「科学」に進化させてきたかを、
リンネの分類法や
レーウェンフックの顕微鏡の発明、
パスツールの発酵の研究、
そしてDNA解析といった
象徴的な事象の解説が挿入される。
まるで5年で劇的に変化した菜園から、
二人が微生物への理解を深めていった
かのように(専門家のくせに)
読ませるところがニクいというか、
読者をかなり意識した筆致で、
これがおそらく類書では異例の売れ方をした
ワザではないかと、僕は推測する。
そして、リービッヒの最小律や、
ハーバー・ボッシュ法による化学肥料が
大量生産されていった歴史が紐解かれ、
いわゆる「緑の革命」の功罪や、
化学肥料製造が戦争にも利用されたという
影の部分もちゃんと押さえられている。
彼が日本人ならおそらく
水俣病にも言及されたのではないかと思う。
その流れで、
化学肥料の父と言われるリービッヒと、
有機農業の父と言われるアルバート・ハワード
との論争へと進む。
そこでは、リービッヒも実は腐植の力を
理解していたとの補足もあって、
誤解が生まれないように注意されている。
第7章になると突然、アン夫人の語りとなる。
彼女に進行性の子宮ガンが発見されたのだ。
そこから体内環境や免疫力、
特に腸内細菌の大事さ、
それは生態系そのものであり、
またそれを支えるのが食生活、
つまり土から生まれる生命であること、
一方で現代は、その生命の源である「土」を
痛め続けている時代であるという
「現実」が提示される。
菌類の力や、食べ物の栄養素の話から、
それがどうやって作られるのかを掘り下げ、
微生物同士での共生・協力関係によって
「生命」は構成されていること、
そして植物の健康と土壌の肥沃さこそが
生物の健康の基なのだと、読者を誘導する。
体内に自然があり、その自然を守ることは
大元である「土」を守ることに繋がっている。
その単純で深い真理を、
農学や土壌学、微生物学など知らない人でも、
また(僕のように)専門用語が覚えられない
人でも理解することができる、それが、
僕が「入門書はやっぱこれにしよう」
と思った理由だった。
自分の健康を守るためには、
何を守らなければならないのか。
いま日本では「安全・安心」といった言葉が
空虚に使われているけれども、
その土台は何なのかを、分からせてくれる。
コッホとパスツールについても
1章が設けられていて、
感染症との関連も語られている。
コロナを経験する前の著書だけど、
抗生物質の「皆殺しの哲学」、
健康な家畜への大量投与など、
示唆に富んでいる。
また長くなってしまいました。
今夜はここまで。
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