• 大地を守る会

順番が逆になったけど、
この報告を。

 

９月２８日（日）、
東京・下北沢のライブカフェ
「４４０」（フォー・フォーティ）
で、大地を守る会（以下、大地）
の創業者である藤田和芳さんと
長谷川満さんを
「唄で送る会」が催された。

６月に報告したのは
オイシックス・ラ・大地（株）
（以下、ＯＲＤ・オーディ）での
慰労会だったが、
今回は「大地」のＯＢが
中心になって呼びかけられた。
みんな「時代」というものを
感じたのだろうか。

集まったのは古い人から現役まで
１００人ほどで、
ライブハウスの席がほぼ
埋まった。

 

（写真は大地・豊島洋さん提供）

 

幹事役を務めてくれた
浅野井邦夫さんの挨拶から
スタート。
現在はＯＲＤの
大地を守る会事業部
アドバイザーという肩書。

 

司会は市川泰仙（やすのり）くん。
僕とはほぼ同期で
今も「大地」の農産物の仕入
を担当している。
仕事はかなりズボラだが、
生産者に愛されるキャラは
「大地の顔」の一人とも
言える人物である。

 

乾杯の音頭は
徳江倫明（みちあき）さん。
僕のかつての上司。

「大地」の理事を務めながら
１９８８年、
日本リサイクル運動市民の会と
提携して、「大地」と同じ
ような有機農産物の宅配団体
「らでぃっしゅぼーや」を立ち上げ、
その後、代表になった。

現在のおもな職責は
一般社団法人
フードトラストプロジェクト代表。
その他、様々な肩書を持つ、
“ 有機農業運動の風雲児 ”
とも言われた人だ。

参加者は１９７０年代時代の
人から８０年代入社まで
順番に紹介され（僕もその一人）、
それぞれひと言語り（みんな長い）、
無礼講の宴会へと流れていく。

ライブハウスを会場にしたのは、
貧しかった時代、
飲んではよく歌ったことも
あったのかもしれない。
職場で仕事が終わっては
飲んで歌い、カラオケに
繰り出したりもした。

薄給で、朝から晩まで働いた。
今ではブラックと言われるような
職場だったが、なぜか楽しく、
つらいと思ったことはなかった。
なんだろう、未来への
根拠のない自信があった。

 

「唄で送る」ということで、
事前にリクエスト受付のメールが入り、
申し込んでいたら、会場に入るや
「トップバッターでいけ」
と言われた。

歌ったのは、
中西礼作詞・加藤登紀子作曲、
石原裕次郎晩年最後の曲、
「我が人生に悔いなし」。

長かろうと短かろうと～
右だろうと左だろうと～
夢だろうと現（うつつ）だろうと～
我が人生に、悔いはない～

この台詞にウソはない。

 

送られる人、二人。

「大地」の産地開拓に
ひたすら全国を歩いた人、
長谷川満さん。

野菜や果物のことなど
無知だった僕は、
この人から栽培技術や
生産者との付き合い方を
学ばせてもらった。

飲めば自虐ネタで
場を明るくする才能は
真似できなかった。

会場から出たリクエストは
橋幸夫の「潮来笠」と、
松山千春の「長い夜」だったが、
この夜は新曲を歌った。
まだまだ枯れませんという
メッセージか。

ちなみに、
隣でギターを弾いているのは
元「らでぃっしゅぼーや」の
潮田和也さん。
よく一緒に呑んだ仲間。
ギターのプロでもある。

 

そして、藤田和芳さん。

１９７５年、
大地を守る会創業から
ちょうど５０年。
やり切った感はあるだろうか。

僕が入社したのは１９８２年。
若造の生意気な文句も受け止めて
議論に付き合ってくれた。
朝が弱く、遅刻常習犯の僕を
我慢強く使い続けてくれた
この人のおかげで、今の僕はある。

藤田さんの十八番は
「長崎の鐘」。
自ら被曝しながらも、現場で
被爆者を治療し続けた医者、
永井隆氏の随筆をもとに
つくられた、平和を願う名曲。

みんながあれやこれや唄う中で、
藤田さんは求められると
いつもこの曲だけを歌った。
それはこの人の生き方
そのものだったように思う。

 

最後は現役の職員から
二人に花束が贈られる。

誕生して５０年。
いろいろあったけど、
大地を守る会はそれなりに
有機農業の発展に貢献し、
食と環境問題に
一石を投じてきたと思っている。

これからどうなるかは、
次の世代に託されている。

藤田さんが著した
『大根一本からの革命』は
まだ終わっていないことを、
僕らは自分ごととして
受け止めなければならない。

「感謝」ではすまない。
託されたのは
「襷（たすき）」である。
この襷は重たく、
しんどいけど、それぞれに
できる走りをしよう。

それを約束することで、
僕らはこれからも歌い合える。