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エビちゃん日記
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話しが前後しちゃって
恐縮ですが、
4月の報告を2件。
4月26日(土)、
久しぶりにジェイラップを訪ねた。
一昨年の9月、
大地を守る会メンバーの
視察をセッティングして以来だ。
ソーラーシェアリングの
田んぼでは、
田植えに向かっての準備が
着々と進められていた。
ちゃんと機械が入れるよう
設計されている。
そして今回、ジェイラップ会長・
伊藤俊彦さんの案内で、
初めて見せられたのは、
太陽光パネルの下で育てられる
小麦畑だった。
品種は「春よ恋」。
春蒔きのパン用小麦だね。
コメが高騰しているときに
ムギを撒く。
なかなかできないことだ。
既成概念にとらわれない
複合的経営戦略と、
具体的な目標イメージが
なければできない。
その昔(1990年代)、
コメの輸入反対から
減反政策をも問う運動に
広がっていったとき、
ある有識者から
「コメを勝手に作らせたら、
コメが余って暴落して、
農家もやれなくなるんですよ」
と、まるで無知を諭すかのように
言われたことがあった。
あの時、僕は
「あんたは農家を馬鹿にしてる」
というセリフで反論した。
いつまでもアホな国家の下僕で
いさせたいんだと思った。
需給の動向も予測しながら
自らの農業経営を思案し、
自身の判断で作付け方針を決める、
これが本来の自立した経営農家
の姿ではないか。
しかし減反政策は、
歴史的にも世界に例を見ない
食糧を「作らせない」
(主体性を奪う)ための
税金投入だった。
その長年の結果がこの有り様だ。
生産調整を、
地域への補助金も絡ませながら
狡猾に実行させる政策など、
そもそも民主的な政策ではない。
「コメを自由に作らせよ」
と主張する秋田・大潟村の、
「自主作付け派」と呼ばれた
減反反対農家たちとも、
あのころ何度も語り合った。
「何を作るかは、
自分(の経営判断)で決めたい」
彼らも主体性をかけた闘いだったのだ。
減反政策はたんなる需給調整ではなく、
農民の主体性の芽を摘み取っていく
国家政策だった。
農家を束ねる農協という組織が
それに加担してきたことを、
僕は今でも犯罪的だと思っている。
「えっ、ムギ植えたんですか!」
案内してくれた伊藤俊彦さんに
僕は車中で感嘆の声を上げた。
「うんまあ、試してみようかと・・」
それ以上は聞かなかった。
答えは秋以降に自ずと見えてくる。
こういうチャレンジを
楽しめる農業こそ、素敵だし、
未来につながっていくんだと思う。
小麦畑の隣では、
無花果(イチジク)の木も
植えられていた。
今年の稲田平野
(僕は勝手にそう呼んでいる)
の様子を見て回ったところで、
今回、伊藤さんが
「ぜひ見にきてほしい」
と誘った場所へと案内される。
そこはジェイラップの敷地の
裏手(北側)にある「森」である。
来るたびに見慣れていた風景だが、
その奥に足を踏み入れたことは、
一度もない。
伊藤さんは、いよいよこの
放置された山林に手をつけ始めた。
みょうけん山とあみだ山、
二つの丘のような山を抱えた
15町歩(≒15万㎡)の山林。
東京ドーム3.2個ぶんある。
この一帯を伊藤さんは、
新しい “ 未来型里山 ” に
再生させたいと、細分化された
何軒もの地権者と交渉を進め、
一枚また一枚と取得しつつある。
勝手な事業に使うんじゃない。
地元の人がいつも眺めては
癒される里山。
都会の人も集まってきて、
一緒に楽しめる里山。
食もエネルギーも自給する、
誇り高き里山。
あみだ山にかつてあった
阿弥陀堂も復活させ、
みんなが帰ってくる里山を
創り直そうと、
説得を続けながら。。。
彼はこの仕事を
「希望の里山100年プロジェクト」
と名付けた。
妻の美代子さんは
「ああ、また始まった」と
ため息をついている。
社長を引き継いだ息子の大輔くんは、
「誰も止められないっすから」
とサジを投げている。
この森の北側に回って、
裏から眺め、歩いてみる。
なるほど。
伊藤さんの夢がそこはかとなく
見えてきた気がする。
嫌な予感とともに・・・
思い返せば1993年、
“ 平成の米パニック ” と
呼ばれた年。ここで建設中の
モミ貯蔵・太陽熱乾燥施設を前に、
僕らは新しい “ 民間備蓄 ” 構想を
語り合った。
しかしその取り組みによって
伊藤さんは農協を左遷され、
仲間農家の支援のもと、
「ジェイラップ」の立ち上げ
へと突き進んだ。
こちらも必死で呼びかけ、
「大地を守る会の備蓄米」は
毎年春から予約が殺到した。
2011年の原発事故による
パニックの際には、
大地を守る会で入手した
放射能測定器をここに設置し、
科学的根拠(エビデンス)を
積み上げながら、
コメの販売(=消費者からの信頼)
回復に取り組んだ。
そして農地を活用した
エネルギー自給へと進化してきた。
合鴨オーナー制度やら
日本酒(種蒔人)の開発やら、
思えば本当に、
いろんな取り組みを
重ね合ってきた。
夜、伊藤さんと
旨い福島の地酒を代わる代わる
酌み交わしながら、
恐れていた殺し文句の脅しを
受ける。それがまるで
井上尚弥のパンチみたいに
繰り出されてくる。
オレはあの時、
エビちゃんにかけた。
エビちゃんも俺にかけてくれた。
この森づくりに
俺たちの終活をかけてみないか。
このプロジェクトに、
エビちゃんのアイディアを
かましてみてほしい。
このプロジェクトには
あんたの名前が必要なんだ
・・・・・などなどなどなど。
明快な回答は避けたけど、
一ヵ月前に電話をもらって、
来た以上は、分かっている。
付き合うしかないと。
1994年に始めた
「大地を守る会の備蓄米」は、
今も事前予約の「稲田米」
として続いていて、
ジェイラップは今年も、
価格据え置きで
応えてくれている。
感謝しかない。
ジェイラップの事務所に、
地元小学校からの感謝状が
飾られていた。
自分たちでトマトを育て、
ドライトマトにして、
販売して得た資金で
ランドセルをアフガンに贈る、
そんな取り組みを手伝っている。
地域を育てることが、
社会を育てることに繋がる。
グローバルに考え、
ローカルで実践する。
これが今あちこちで起きている
手作りの「革命」である。
「希望の里山100年プロジェクト」
自分にどれだけのお手伝いが
できるのか分からないけど、
このメッセージを突きつけられ、
もはや逃げる道はない。
イヤちょっと、
ワクワクしてたりして・・・
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