logo

BLOG

エビちゃん日記

トップ エビちゃん日記

悠久よりの愛

2025/09/20
  • あんしんはしんどい日記
  • 雑記その他
  • 食・農業・環境
悠久よりの愛

9月16日(火)は
3連休明けにもかかわらず、
勝手を言って
休暇を取らせてもらった。

以前お伝えした
畠山重篤さんの追善上映会
に参加するためで、これは
「NPO法人森は海の恋人」
会員としては、最低限の義務
だろうという思いがあって、
足を運ばせた。

会場はJR飯田橋駅に直結した
セントラルプラザ10階にある
東京ボランティア・市民活動センター
の会議室。

110分という長編の
ドキュメンタリー映画
『悠久よりの愛 ~脱ダム新時代~ 』
(金子サトシ監督)

「森は海の恋人」命名の
の元となった
熊谷龍子さんが詠んだ歌

森は海を
海は森を恋いながら
悠久よりの愛紡ぎゆく

から付けられたタイトルだが、
内容は畠山さんたちの活動に
とどまらず、
ダム建設計画を阻止した地から
既設のダムを撤去させた地、
あるいは建設に至ってしまった地、
あるいはこれからどうなる、
といった各地を
取材して編まれた作品である。

 

ロケ地は6ヵ所。

宮城県・新月ダム。
1973年に計画が持ち上がるも、
畠山さんたちの活動もあって
2000年、ダム建設計画中止。

京都府・鴨川ダム。
1987年、ダム候補地に挙がると
同時に反対運動が始まり、
1990年、白紙撤回。

熊本県・荒瀬ダム。
1949年に発電用ダムが竣工。
粘り強い運動を経て、
2010年、知事がダム撤去を表明。
2018年ダム撤去完了。
日本初の「ダム撤去」となる。

長崎県・石木ダム。
1975年に県が事業採択。
反対運動続くも2019年、
すべての土地が強制収容される。

群馬県・八ッ場ダム。
1952年の「ダム調査」から
反対運動含め政治的紆余曲折を経て
2020年3月、ついに竣工。

埼玉県・玉淀ダム。
1964年、荒川中流の寄居町に
発電・灌漑用水用ダム建設。
現在、撤去ではなく
産業遺構(観光資源)として残す
案が検討されている。

 

これらを取材して回り、
ダム問題の複雑さ・厄介さが
浮き彫りにされる。
水力発電はクリーン・エネルギー
とも言われるが、
巨大なダムとなると、それは
自然破壊とともに水循環を狂わせ、
地域の共同体をも壊滅させることを
前提として存立する。

原発と同じく、
ダム建設も様々な利権が絡み、
地域社会を分断させながら
進んできた日本の裏面史である。

そんななかで出色なのは、
畠山さんたちがやったことは
反対運動ではなく、
山に樹を植え続ける、
つまり自然のダムを取り戻す運動
であったことである。

しかもその活動から、
森と海のつながり、山から海への
栄養循環を解き明かした。
その功績によって畠山さんは
2012年、国連森林フォーラムから
森林育成に貢献した人に贈られる
「フォレスト・ヒーローズ」
を漁民として初めて受賞した。

 

長編のドキュメンタリー映画は、
ともすると単調になりがちなので
途中で眠くなったりするが、
一人一人の言葉を受け止めないと
いけないと思って、見続けた。

「川は流れて川なんですから。
ダムで堰き止めて川を分断されては、
動物や生物はもとより、
京都1000年の文化にとっても
大問題だと・・」
(鴨川ダムに反対したお寺の住職、田中真澄さん)

「ダムが撤去されて元の清流に戻り、
たいへん喜んでいます」
「ダム開発で栄えることは全くなかったね。
若い人たちにとどまってもらうために
いま、頑張ってます」
(荒瀬川ダムの地元民)

 

僕らの暮らしにはそれを支える
「源流」となる裏山があって、
そこでは長く、暮らしを守るための
せめぎ合いが続いてきた。

両者ともに言いぶんがあるとはいえ、
しかし歴史的には、
下流の多数派のために、
あるいは国策のために、
豊かに営まれていた上流の
地域共同体を犠牲にしてよいのか
という「民主主義的問い」は
ほぼどこも圧倒的な政治力によって
潰されてきた。

そうして破壊の「ツケ」が
回りまわって下流域(消費者)
の暮らしに、そして未来世代に
引き渡されてきている。。。

 

上映会後、金子監督と
プロデューサーで矢間秀次郎さん
のトークがあった。

矢間秀次郎さん、85歳(写真左)。
千曲川・信濃川復権の会事務局長。
若い頃に東京都の職員でありながら
都の都市計画を批判して以来、
水環境を守るために奔走してきた
反骨の人である。

帰りがけ、
矢間さんの著書を購入させていただく。

『揺るぎの時代を生きぬく』
(合同出版刊)。
「公害」とたたかい続けた
集大成とも言える記録。

サインもねだったところ、
“ 心に泉を! ” としたためてくれた。

畠山重篤さんに合掌し、
帰途につく。

“ 悠久よりの愛 ” とは、
すべての生命体にとっての
根本原理を忘れつつある
現代に生きる人類への
問いかけの言葉のように
思えてくる。。。

森は海を、
海は森を、
慕い続けた “ 愛 ” を、
海から生まれたはずなのに
争いばかりしている人類は、
とうに忘れてしまった・・
のだろうか。

お問い合わせ

Contact

商品、委託加工、
その他ご不明点につきましては、
お気軽にお問い合わせくださいませ