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エビちゃん日記
- 生産者・産地情報
北海道比布(ぴっぷ)町。
旭川市の北に隣接する、
人口約3500人という小さな町。
パ行から始まる日本唯一の自治体。
ピップとはアイヌ語で
「ゴロゴロした石の多い川」
という意味だそうだ。
ちなみに、気になって調べてみたが、
ピップエレキバンとの関係は、
どうもないようである。
かつて、大地を守る会時代、
旭川から北に向かって産地を回る際は、
鷹栖-剣淵-士別と北上していったが、
比布は通過するだけだった。
あの当時、ここに有機農家はまだいなかった。
(南だと、美瑛から富良野。さらに
狩勝峠を越えて十勝まで走ったこともある。)
ここに今、耕作面積200ha(町歩)、
うち100haを有機栽培する農家が出現している。
比布町の農地面積が約2100haだというから、
町の農地の約1割を一軒の農家で請け負っている
勘定になる。
しかも家族3人だけでやっているというのだから、
驚きの2乗、驚愕のレベルだ。
この農場の主は、
今城(いましろ)正春さんという。
御ん年78歳。
元は百貨店の店舗設備関係の
仕事をされていたという今城さん。
1988年、42歳の時、
家族の反対を押し切って
出身地の比布で農業を始めた。
少しずつ農地を広げ、1991年、
(有)営農企画という法人を設立する。
その当時はまだ有機栽培ではなかったが、
自身の農産物の評価を確立させるために
研究を重ね、「有機」にたどり着く。
2012年、有機JASの認定を取得。
自家製のたい肥場もつくり、
周囲の農地も引き受けながら
規模を拡大してこられた。
2014年には有機加工の認証も取得し、
16年には旭川にオーガニック専用工場も建設。
焼き立てパン工房など、
栽培から加工・販売まで展開する、
農家というより精力的な実業家である。
7月5日(金)、
日本有機加工食品コンソーシアム主催による
北海道研修会は、その(有)営農企画・
今城ファームの見学から始まる。
今回の視察のお目当ては、
新たに立ち上げた有機肥料製造工場と
もみ殻燻炭の製造工場。
稼働したばかりで、
じつは前日に落成式をやったばかりだ。
お祝いの花もまだ飾られていた。
写真の右側がもみ殻を炭化させる設備。
左側がたい肥製造施設。
たい肥場は別な場所にもあるのだが、
ここは有機を広げるための肥料販売も
視野に入れた設備だ。
両方合わせての総工費は4億円。
農水省「みどり戦略」の補助金も活用した。
有機を広げるためには、
できるだけコストや労力をかけずに
良質のたい肥を提供する必要がある、
と考えてのプロジェクトである。
肥料の原料は、鶏糞に
きのこ廃菌床(きのこ生産に使われた後の菌床)、
もみ殻炭に、その炭化過程で出るモミ酢液、
馬糞、木灰、光合成細菌など10種類。
ほとんどが周辺農場から出るものを原料としている。
しかもできるだけコストをかけない
工夫も施されている。
たい肥原料を自動で撹拌する装置。
撹拌しながら、床からは
隣のバイオ炭製造機から出る排熱を
利用して温風を吹き出させて
発酵を促進させるシステム。
もみ殻炭化施設に使われるエネルギーは
バーナーで着火させるだけ。
その後は自熱で燃え続ける。
説明する今城正春さん。
有機を広げるには、良質の有機肥料が必要だ。
しかも地域の未利用資源を活用して、
低コストで供給できる仕組みが求められる。
それが今城さんの
有機拡大事業のコンセプトである。
これが出来上がったもみ殻炭。
これは有機物のエサではない。
棲み家となり、土壌の物理性や化学性、
生物性を向上させていくのだ。
続いて大豆の畑を見学。
1枚1町歩(ha)の大豆畑。
元は田んぼだったというので、
排水対策はどうしたのか尋ねると、
何もしていないと言う。
疑問に思ったので、午後のセミナーで
さらに質問をしたところ、
「6年連作しているが、障害は起きてない」
との回答に驚く。
僕は農学は素人だが、
水田跡地でのダイズ栽培は
過湿対策が大事だというのが、
ずっと聞かされてきた話だ。
ムギや野菜との輪作体系が必須だと。
これで連作障害が起きないとしたら、
キモはあの肥料の力、ということになろうか。
今後の分析が待たれるが、
改めて “ 有機の力 ” が
科学的に証明される日が来るかもしれない。
夜の懇親会で再度尋ねたところ、
「脱サラ農民だからできたんです」
とも言われた。
農学の常識を知らなかったから、だと。
午後は比布町の農村環境改善センターに
移動して、セミナーが行なわれた。
道や地元の職員も参加され、
比布町長の歓迎の挨拶から始まり、
農水省農産局の方からの政策説明に、
北海道大学名誉教授の大崎満氏と、
北海道農業研究センターの上級研究員・
池田成志さんの講演など、
なかなか濃いお話が続いた。
特に池田さんの話を聞くのは久しぶりで、
いよいよ過激になってきたように思われ、
嬉しくなった。
いつか紹介することになると思うので、
ここでは割愛したい。すみません。
今の自分の立ち位置的には
旭川の加工場を見たいと思ったが、
それは改めて機会を得たいと思う。
いずれにしても、
かつては不可能と思われた規模で
有機農業が実践されてきているということだ。
日本での有機農業運動は停滞している
とも言われてきたが、現場では確実に
新たな時代を拓きつつある。
食品加工という立場で何ができるのかを、
加速させなけれなばならない。
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