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自然農法の農場を訪ねて

2024/07/21
  • 生産者・産地情報
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自然農法の農場を訪ねて

7月15日(月)、晴天の中、
クマゼミの初鳴きを聞く。
シャーシャーシャーシャー ~

この声(羽音)を聞くと、
リポビタンD! みたいに
やる気が湧いてくる。
なぜか、、、今でもよく分からない。

 

翌16日(火)は
一転して雨になった。

線状降水帯が発生したか、
静岡県菊川市では警戒レベル5の
「緊急安全確保」情報が出されるなど、
やや緊張が走る中、
僕は朝から伊豆の国市浮橋という
山の中にある
MOA自然農法文化事業団が運営する
「MOA大仁(おおひと)農場」
に向かって車を走らせた。
「自然農法」団体の一大拠点である。

 

「自然農法」と「有機農業」では、
肥料に対する考え方の違いが大きいが、
とりあえずここでは広く、
同じ環境保全型農業を目指す
仲間だと思ってほしい。
(実際に一緒に学んだりすることも多い。)

また「自然栽培」とか「自然農業」とかの
呼称もあって、なんかよう分からん
と思っている人も多いかもしれない。
まあそこは軽く、
農業に対する考え方はほぼ同じだが、
「自然農法」を標榜する団体には属してない
ので誤解されたくないと思われてのこと、
くらいの理解で差し支えないかと思う。
宗教色を感じる人もいるだろうし
(実際そうでもある)。

とくに独力で自身の栽培体系を確立された方
(「奇跡のりんご」の木村秋則さんなど)は、
独自の名称で語ったりする。

 

さてそこで、
「自然農法」を最初に唱えたのは、
1935(昭和10)年に世界救世教を
設立した岡田茂吉氏である。

いま、その教えを引き継ぐ農業団体が
主に3つある。
(他にもあるようだが、よく知らない。)

そのひとつがMOA自然農法文化事業団で、
大仁農場はその実証実験農場かつ
研修施設として運営されている。
MOAとは
「Mokichi Okada Association」の略。

 

ちなみに、「自然農法」というと、
『わら一本の革命』で有名な福岡正信氏
連想する人もいるだろう。

福岡正信氏が自然農法に着手したのは
1937(昭和12)年。
ほぼ同時期で、二人とも
肺結核を患ってからの転機という点も
共通しているが、宗教家で芸術家でもある
岡田茂吉が世田谷の自宅で
家庭菜園から始めたのに対して、
福岡正信は農業技術指導者からの転身
(進化というべきか)だった。

両巨頭が、東京と愛媛から、
ほぼ同時に「自然農法」を提唱したという
のだから、奇跡のような話である。
(この経緯はちゃんと調べる必要があると思うが。)

そして救世教の関係者は、
自分たちの栽培ノウハウを確立させるために、
福岡氏に弟子入りして学んだということを、
僕はいま読んでいる吉田太郎さんの新著
シン・オーガニック』で知った。

 

その岡田茂吉師の教えを受け継ぐ
「MOA自然農法文化事業団」の農場が、
函南の隣・伊豆の国市にあって、
その視察にやってきたのが
関西の取引先「コープ自然派事業連合」の
農産物の供給を担う
「(株)コープ有機」の関係者たち10人ほど。

コープ自然派さんとは
大地を守る会時代から何度も顔を出した
友好団体であり、大仁に来るなら
顔を出さないワケにはいかない、
となった次第。

 

ここの敷地は広大(全体で約130ha)で、
早めに到着したはずが、合流場所を間違える。
僕は「MOA研修センター正門」で待ち、
視察団は「農場正門」に直行。
その差は距離にして約2㎞あった。

こちらが農場の案内所。

「公益財団法人 農業・環境・健康研究所」
という看板も掲げられていた。
この法人が何をしているのかは、知らない。

 

朝9時、新潟から移築したという
築250年の古民家に案内され、
レクチャーを受ける。

説明してくれたのは、
MOA自然農法文化事業団の専務理事で
普及部長も務める阿部卓さん。

まずは農場の概要から。

ここ大仁農場は、
自然農法の技術開発(品種育成も含む)と
実証展示(栽培の実践現場を見せる)、
調査研究を目的とする「中央研究農場」として、
1982年に開設された
(開発造成して事業開始は85年)。

農場の面積は、山林や施設を含め100ha。
うち農耕地は11ha。
他に牧場(有機畜産による養鶏)や
農業者を育成する「自然農法大学校」、
園芸療法を行うクリニック「奥熱海療院」、
農業体験ができる菜園に、
不登校の子供を受け入れる
フリースクールまで併設されている。
いかがわしい教育施設ではない。
ちゃんと地域の学校と連携して
単位取得を手伝っているスクールだ。

標高は310~440mというから、
かなりの傾斜地である。
土壌は造成台地土(非固結細粒質火山灰土)で、
地力が低く、団粒構造ができにくい。
傾斜もあるため土壌流亡も起きやすい。

開設して最初の5年は
バーク堆肥などを入れた「炭素循環農法」。
次の10年は地元から出る
牛糞やモミ殻・培養土(ボカシ肥+土)を
使っての「地域循環農法」。
そして緑肥や自然堆肥による
「農場内循環農法」へと至り、
今ようやく地力(作物の根)のみで育つ
「ほ場内循環農法」に進みつつあると、
簡単ではなかった道のりが語られた。

果樹園では梨・ブドウを無農薬で
育てているが、「普通に穫れます」。

土壌断面調査の実施等で土の状態を知り、
微生物や土壌小動物の多様性を高める。
適地適作、等々、考え方の多くは
有機農業と共通する。
肥料が低投入型になっていくのは、
有機でもよく聞かれる話だ。

決定的な違いは、自家採種を基本とする
ところか。
ここでは8割の品種が自家採種だという。

連作の試験も行われている。
拮抗微生物が繁殖し、生物多様性が
豊かになるにつれ、土のバランスも整い、
連作が可能になる、と阿部さんは語る。
北海道で見た今城さんの大豆連作を
思い出させる話だ。

少々驚いたのは、
農家が自然農法に転換していく過程で、
土壌条件によっては動物性のたい肥も
認める場合がある、と
サラッと言われたことだ。

この一点については、教祖の教えもあって
譲れないものと思い込んでいたが、
ここの農場でも施用した経緯があり、
生産者の現場の実情に配慮する姿勢を
持たれていることは、僕にとって
ちょっと認識を改める発見となった。

なので、自然農法の認証マークも
4段階に分かれている。

左から右に、いやどっちでもいいけど、
見比べてみてほしい。

「特別栽培」も設定されているが、
そこはさすがに「化学肥料は不使用」
となっている
(国のガイドラインでは、
 農薬・化学肥料とも5割減)。

 

座学の後は、小雨の中、
ほ場に出る。

すみません。
2500字を超えたので、
今夜はこのへんで。

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