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エビちゃん日記
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1月20日、
酪農王国オラッチェの片隅で、
蝋梅(ロウバイ)の蕾が開いた。
来訪客は気づかないかもしれない。
いつも休憩で外に出たときに
たむろする駐車場脇で、二本だけ、
太ることなく生きている木だ。
この間、書くのがとても億劫な
気分が続いた。
これまでもスランプは何度もあったけど、
今回はどうも違う。
書くのがはなはだつらい。
原因は分かっている。
12月から立て続けに届いた訃報である。
しかしこれを書かないと、次に進めない。
12月11日、北海道の玉ねぎ生産者、
大作幸一さんが亡くなった。
享年88歳。
12月27日には、山形県高畠町・
おきたま耕農舎の代表、
小林亮さんが亡くなった。
享年78歳。
そして年が明けた正月元旦(1日)、
今度は長崎・長有研の元代表、
近藤正明さんが亡くなったとの知らせ。
享年77歳。
それぞれ、大地を守る会の草創期から
成長期を支えてくれた重鎮である。
もちろん今も変わらず- であったが。
北海道札幌市で、幻の玉ねぎとも
呼ばれる「札幌黄(さっぽろき)」を
長年大切に育ててきた大作さん。
僕が「大地」に入社(ちなみに補欠合格)
したのは1982年だが、
84年頃から大作さんは、毎年2~3月に
開催した「大地を守る東京集会」で、
じゃが芋の金井正さんとともに
数日「大地」のセンターに寝泊まりして、
配送車に同乗して会員宅を回ったり、
関東の生産者を訪ねたり、
夜は職員と遅くまで語り合ってくれた。
(配送車に同情した大作幸一さん(左)。
大地を守る会HPで連載した「ヒストリー」第1話にも掲載。)
鍛え上げた筋、のようなものが
小さな体の精神を貫いていて、
農業技術論もさることながら、
日本の国のありようを見つめては、
未来を憂いておられた。
「戎谷くん、大地の役割は大きいよ」
いつも最後はそう言って肩を叩いて、
札幌に帰っていかれた。
会う度に胸を熱くさせてくれた方だった。
今は息子の淳史さんが立派に跡を継いでいて、
安らかに眠られたことと思う。
‥‥葬儀には行けずじまい。
年の瀬も数日に迫った29日、
今度は山形から小林亮さんの訃報が届く。
11月9日の、藤田元会長の
喜寿を祝う会でお会いした時は、
変わらずの健在ぶりだったのに。。。
1月9日に告別式をやるとの事で、
詳細を待つ形で年を越した。
さらにショックを受けたのが、
正月中に入った近藤正明さんの訃報。
葬儀には、生花と弔電を手配するのが
手一杯だった。
長崎・島原半島南部の農民が
有機農業研究会を立ち上げ、そこから
20数名の同志とともに
(株)長有研を誕生させたのが、
僕の「大地」入社の翌1983年。
近藤さんが「大地」に営業にやってきた
のは、その次の年だったか。
穏やかな方で、
営業は得意ではない感じだったが、
年下の生意気な僕らの言葉を
誠実に受け止める態度は、
勉強させられた。
有機農産物の表示をめぐって
大きな論争になった1990年代。
「大地」は、ただ「表示を規制する」
ための国の制度設計に猛反対しながら
(有機農業の推進が根底に必要だと主張した)、
いっぽうで
「有機」に限らず、すべての農産物の
栽培履歴を正しく開示できる
「システム認証」への取り組みを
生産者に呼び掛けた。
大地を守る会初代会長の藤本敏夫さんが
創り上げ、提唱した仕組みだ。
「表示」はその結果表現であると。
「有機」に限らず、
減農薬であれ慣行農法であれ、
農薬や肥料の使用を
ほ場ごとに正しく記帳していくという
面倒な仕組みだったが、
その呼びかけに呼応して、
最初にチャレンジしてくれた生産団体
の一つが長有研だった。
2000年に入って、
有機農産物の表示がJAS制度で
法制化された際も、
システム認証に取り組んだ長有研の
対応は早かった。
当初はおそらく内部から
相当な反発もあったことと思う。
「そんな面倒なこと、やれない!」
「国の認証なんていらない!」
‥‥そんな罵声や疑問を浴びながら
乗り越えてくれた近藤正明さんの、
穏やかな物腰の奥にある凄みに、
僕は感謝とともに畏敬を感じたものだった。
当時の苦労話を、そろそろ
笑いながら語り合える頃だろうか。
そんなふうに思っていただけに、
もうお会いすること叶わず、
ただただ残念でならない。
ちなみに、我が社が誇る
「手むきみかんジュース」の原料は
ずっと長有研さんのミカンである。
これからも大切に絞らせていただくことを、
近藤さんにお約束したい。
1月9日(木)。
小林亮さんの告別式に参列するため、
函南を早朝に立つ。
東京に着いた時にはすでに
東北新幹線は遅れを見せていて、
山形新幹線に入ったあたりから
一面雪景色となり、
米沢駅への到着はさらに遅れた。
(続く)
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