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「カエルの騒音」から「無主物」について‥

2023/07/15
  • 雑記その他
「カエルの騒音」から「無主物」について‥

2023年7月15日、丹那盆地は緑です。

梅雨前線はまだ日本列島に残っていて、西日本では線状降水帯も発生、前線が北上している。
豪雨によって被害に遭われた地域の方々には、衷心よりお見舞い申し上げます。

と、そんな折りの、朝からど熱い7月11日、通勤途中でクマゼミの初鳴きを聞いた。
南四国に育った僕にとっては、クマゼミこそ “ 夏到来 ” のスイッチであります。

夏ですね。サマーですね。
皆さま、くれぐれも熱中症にお気をつけください。
おっともう一つ、コロナにも、です。
専門家筋からは、すでに第9派に突入しているという説も聞こえてきます。
お上はもっぱら、国民の健康よりも経済のようですが・・・

さて、動物の鳴き声と言えば、一ヶ月ほど前、車の運転中にラジオのニュースを聞いていたら、
「カエルの鳴き声がうるさいので何とかしろ」
という苦情が寄せられて農家が困っているという話題が紹介されていて、思わず絶句してしまった。

場所は聞き洩らしてしまったが、瑞穂の国ニッポンのどこかで、そんなトラブルが起きているらしい。

“ 田んぼにカエル ” は日本古来からの風物というか自然現象であって、
それはいくらなんでも言い掛かりというものだと思ったが、
そのあと気になってネットで調べると、
SNSでかなり盛り上がっていたことが分かった。

コトの発端は、風で飛ばされてきた張り紙を拾った方が、SNSにアップしたということらしい。
その貼り紙にはこう書かれていた。

田んぼの持ち主様へ
カエルの鳴き声による騒音に毎年悩まされています。
鳴き声が煩くて眠ることができず、非常に苦痛です。
騒音対策のご対応をお願いします。
近隣住民より。

これに対してネットでは、
「田んぼのある場所に住んだほうが悪い」とか「気になるほうがおかしい」とか、
わずかに「少数意見の声も聞くべき」といった意見があったものの、ほぼ批判的なもので占められている。
農家の「だったら米を食うなと言いたい」といった声を拾った取材記事もあった。

興味本位で検索しただけだったのが、おまけで、何と実際に裁判で争われたことがあったことも知った。
2年前の春に、東京で争われている。
そこではこういう判決が下された。

カエルの鳴き声は自然音の一つであり、
あえて大きな音を発生させるような被告による作為があったなどの
特段の事情がない限り、騒音には該当せず、
社会通念上受忍すべき限度を超えるようなものとはならない
と解すべきである。
(2021年4月23日、東京地裁判決)

まあそうだろうと思う。
僕が田んぼの持ち主だったら、やはりそう答えたい。

カエルの鳴き声は自然音であります。
私が放ったものでもないので、私の責任ではありません。
ついでに言わせていただくなら、
カエルはイネの害虫を食べてくれる益虫です(虫ではないけど)。
彼らをせん滅するには、強力な毒薬を用いなければなりません。
それでは水系も汚染されてしまいますし、
った(増えた)害虫の駆除にも、余分な農薬散布が必要になります。
農薬散布は大気も汚します。
どうか、食べ物を守っていると思って、寛容にお願いしたいです。
繁殖期のいっときのことですし。
仰向けになって死んだカエルが大量に浮いている、
そんな田んぼの米を、あなたは食べたいと思いますか?

・・・しかしそんな正当論をぶっても、
苦情の主としては「耐えられないものは耐えられない」
と、余計に反発を募らせるのかもしれない。
どうしたものでしょうね。。。

それにしても・・と、つい想像を広げてしまった。

風に飛ばされてきた張り紙・・
田んぼの持ち主は見たのだろうか。
見た上で、そのまま放り投げたのだろうか、
丸めたり破いたりしてゴミ箱に投げ捨てるのではなく。

また張り紙の主は、なぜ直接悩みを伝えることなく、
「近隣住民」という匿名での行為を選んだのだろうか。

近所付き合い(人間関係)は、ともすれば煩わしい。
面と向かって抗議すると、あとあと面倒なことになりはしないか、
と思う気持ちも分からなくはない。

しかしヒトは、ヒトとなってからずっと、
助け合って進化してきた生物である。
話し合いを避けて、相手に怒りを与えても、
悩みは解決しないばかりか、
かえって不穏な空気の中で暮らす羽目にもなりかねない。

そもそもカエルは水田という装置が生まれた大昔から、
日本じゅうで鳴いていたはずだから、その方は
幼少の頃からカエルの「騒音」に悩まされてきたのだろうか。
そうではないように思う。
ある時から「カエルの唄」が「騒音」に変わったのだ。

想像を膨らましていって、たどり着いたオチは-
これはコロナ禍が生んだ副作用ではないか、というものだ。
行動制限や自主規制(自宅に籠るとか)が、
ある種のストレス障害をもたらしたのではないか。

加えて「素直な相談」という「穏健な一歩」が思いつかなかった。
これを、コミュニティの希薄化が生み出した社会的病理の一現象
と言うと、大げさだろうか。

ただ思うのである。
「近隣住民」と書いたその方はきっと、孤独なのだ。

カエルの鳴き声は「自然音」です。
日本に生息するセミの中で間違いなく最もやかましい
クマゼミの鳴き声も、「自然音」です。
誰のものでもありません。生態系の仲間です。
慈しんで、とまでは言いませんが、どうかご容赦を。

で・・・
「誰のものでもない」-で思い出した言葉がある。
「無主物」という3文字だ。

原発事故によって放出された放射性物質を「無主物」と呼んで、
当方の持ち物ではないので回収する義務はない、と言い放った電力会社があった。

いま彼の地では、汚染水が「処理水」となって、太平洋に流れ出そうとしている。
先に書いた東京地裁の判決を真似るなら、
これは作為をもって流すものであるからして、
決して「無主物」ではないと思うが、いかがか。
とはいえ、自然界に放出されたら最後、
「回収不能」=責任の取りようがないモノとなるが。

クマゼミ ⇒ カエル ⇒ 無主物 ⇒ 汚染水・・・
ヘンな連想ゲームになってしまった。
やっぱり気になってるんだな。
書かずにいられないなら、書いておこう。
次回、トライしてみたい。

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