logo

BLOG

エビちゃん日記

トップ エビちゃん日記

「江川邸」と江川英龍

2023/11/07
  • 竹林再生
  • 雑記その他
「江川邸」と江川英龍

11月5日(日)、ついに、38年の時をへて、
我が阪神タイガースが日本一を奪回した。

長かった、本当に長かった・・・
生きている間にもう見ることはないかと
思っていた瞬間が、来た。。。もう涙しかない。

まあ何やな、今年の流行語大賞は、アレで決まりやな。

タイガースファンの皆さま。
おめでとうございます!
次はいつになるのか・・長生きしましょうね。

世間の皆さま、今夜ひと晩はお許しを。
経済効果も高いということのようですので。
ワタクシは、夢のなかで
戎(えびす)橋から道頓堀に飛び込みます。

 

・・・と理性を失ってしまった11月5日。
実は、この日に書こうとしていたのは、
もっとまじめな、由緒ただしい
歴史遺産のお話であったのですが。。。

気を取り直して、綴ります。

 

函南町のお隣、伊豆の国市の韮山(にらやま)
という地区(旧・韮山町)に、
江川邸」という江戸時代の代官さまの屋敷がある。

国の重要文化財に指定されていて、
「公益財団法人 江川文庫」によって維持管理されている。

屋敷そのものだけでなく、
韮山代官時代からの関係資料や書画、
遺品などひっくるめての「重要文化財」指定で、
韮山の人たちにとっては “ 地域の誇り ” であり、
地域アイデンティティの底流にある
ともいえる文化遺産である。

 

江川家は清和源氏(※)の流れをくむ「伊豆の豪族」で、
28代の江川英長が徳川家康に仕えたことで、
徳川幕府が開かれて以後、代官としてこの地を統治した。
その範囲は伊豆国にとどまらず、
現在の東京・多摩あたりから相模・足柄・鎌倉、
そして駿河国の東部・駿東郡まで及んだ。
現在の当主まで42代を数える。

(※)清和源氏:第56代清和天皇(在位858~876年)
   を祖とする源氏氏族

そんな長い歴史を誇る江川家のなかでも
とくに著名なのが、幕末時代に活躍した
第36代・江川太郎左衛門英龍(ひでたつ)である。

「担庵(たんなん)」の号を持つ文化人であり、
文学、芸術だけでなく、工学、医学の分野でも
功績を残した万能人。
江戸末期のレオナルド・ダ・ヴィンチとも呼ばれる。

 

英龍が自ら描いた自画像。

邸内には数々の書画や歴史資料が展示されている。

その55年の生涯において、
たんに学問を修めただけでなく、漢詩、絵画、
彫金・彫刻、作陶から剣術、刀剣製作まで、
多彩な能力を発揮した。
凡人には、さぞかし忙しい人生だったことだろう、
としか想像できない。
いやむしろ、「ほとばしる才能に苦しんだのではないか」
とすら心配したくなる。

 

 

功績はそれだけではない。

1850年に疱瘡(ほうそう)が流行った際には、
我が子に種痘を受けさせ、成功を確かめた後で、
村々をめぐって地域に種痘を普及させた。

天保の飢饉に見舞われた際には窮民の救済に奔走し、
自らは質素倹約を旨とし、
その善政をもって「世直し江川大明神」と讃えられた。

英龍公が今の世をみれば、
なんと言って嘆かれることだろうか。
いや、どんな行動を起こすことだろうか。

「令和」に帰ってきてくれないものかしら・・・

 

 

功績は、まだある。

東京にお台場をこさえたのは、英龍なのだ。

ペリーの黒船来航後、英龍は
相模から安房まで海岸線を巡視し、
富津から横須賀間に9基の台場を築いて
江戸湾封鎖を計画したが、
幕府は江戸湾奥に12基の台場を築くとし、
その設計と築造を担当した。
英龍はすでに蘭書から西洋技術を学んでいた。

今日栄えるお台場の礎を築いたその人こそ、
江川英龍なのである。
若者たちよ、感謝して遊べ!

さらに英龍は、砲術を修得し、
鉄製大砲の製造にも取り組み、
「反射炉」という製法での鋳造炉を建造した。

日本初の反射炉建造は佐賀藩であるが、
実は藩主からの依頼を受け、
英龍が協力している。

英龍が心血を注いだ「韮山反射炉」は
明治維新後しばらく放置されたが、
地域住民の協力のもと修復が重ねられ、
ついに2017年、世界遺産に登録された。

江川邸から車で5分ほどの距離にある
韮山反射炉は、今や観光名所になっている。
英龍の銅像も建っている。

 

さらに、さらには、だ。

英龍は日本で初めてパンを焼いたお方でもある。
当時のパン焼き窯と鉄なべが、
邸内土間に残されている。

ただし、今のような柔らかいパンではなく、
乾パンのようなものだったという。
英龍は、軍隊の携行食としてパンに着目したのだ。

1842(天保13)年4月12日。
初めて作ったこの日にちなんで、
毎月12日は「パンの日」とされ、
英龍は「パン祖」としても、その名を残した。

江川邸内には、
その「パン祖」の碑も建てられている。

 

しつこいようだけど、最後にもう一つ。

英龍は海防に関する知識や技術を後進に伝えるために、
邸内で私塾を開いた。

280人ほどが学んだ門人の中には、のちに
勝海舟や吉田松陰、坂本龍馬などに影響を与えた
佐久間象山の名もある。

 

ただただスゴい人だと感嘆する他ない。
もっと有名であっていいはずなんだが、
じつは江川英龍の研究は、
まだ始まったばかりなんだそうである
(江川文庫パンフレットより)。

いつかNHK大河ドラマにでも登場してもらいたい
ものだと、よそ者ながら願いたい。

 

さて、そんな江川邸で、
11月4ー5日と二日間にわたって
夜のイベントが催された。

『灯そう2023 江川邸の庭へ』

 

本当はこの報告をしたかったのだが、
昼間に邸内の展示に魅入ったせいでか、
つい江川英龍公の紹介に力が入ってしまった。
イベントのレポートは次回にしたい。

お問い合わせ

Contact

商品、委託加工、
その他ご不明点につきましては、
お気軽にお問い合わせくださいませ