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進化する産地

2023/09/22
  • 生産者・産地情報
  • 脱原発・自然エネルギー
進化する産地

9月20日(水)、
まだ夏のような暑さが続いているというのに、
彼岸の入りと同時に、彼岸花(ヒガンバナ)が咲いた。
まるで待ちかねたように・・・不思議なものですね。
ただちょっと例年より色が淡い感じもする。

彼岸花、別名「曼殊沙華」ともいうが、
全国各地には「葬式花」とか「地獄花」とかいろんな名前がある。

地下部に玉ねぎに似た鱗茎ができ、毒を持っているが、
すり潰して長時間水に晒すとその毒が抜け、
でんぷんが得られる。
生薬としても利用されている植物だ。

民俗学の泰斗、宮本常一氏の『忘れられた日本人』(岩波文庫)
には、江戸時代に土佐藩が救荒作物として田畑の畔(あぜ)に
植えさせたという聞き書きが記されている。

土佐(高知県)の山間部では「シライ」と呼ばれ、
鱗茎を掘って、煮て、川水で晒して毒を抜き、
搗いて餅にしたそうだ。「シライ餅」という。
美味くもなかったようだが、飢饉の際には命を救ったのである。
(「土佐寺川夜話」より)

畔に植えたのは、固めた畦を潰すモグラ除けの効果もあるから
らしい。

 

さてと。
そんな季節感を抱きつつも、ここは前に進まないといけない。
このレポートを書かないと、どうも次に進めない一件がある。
遅ればせながらも、まとめておきたい。

 

9月9日(土)、午後に函南を立ち、
新幹線を乗り継いで、夕方、東北本線「須賀川」駅に着く。
目的地は、米の生産団体「ジェイラップ」。
大地を守る会の定期登録米(かつては「備蓄米」と称した)
として、長く会員に支持されてきたコメの一大産地である。

ジェイラップ会長の伊藤俊彦氏とは、米の取引が始まった
たしか1988年からのお付き合いだから、もう35年になるか。
あの頃はまだ、伊藤さんは農協の営農指導員だった。
お互いに若かった。

最初は初期除草剤を一回だけ使用する減農薬米だったが、
90年代初めに合鴨農法(当時は「合鴨水稲同時作」と言った)
による無農薬での米づくりに挑んだ時、
こちらは「合鴨オーナー制度」をつくって応えた。

太陽熱乾燥とモミ貯蔵という画期的な設備を整えたのが93年。
この年に「平成の米パニック」と呼ばれた大冷害に襲われ、
翌年から年間予約を受ける「民間備蓄」に取り組んだ。

合わせて「1枚でも多くの田んぼを残していこう」と、
オリジナルの日本酒「種蒔人」も一緒に開発した。

しかし大地を守る会と組んでの「備蓄米」の取り組みは、
農協という組織からは認めがたい挙動だったようで、
相当な圧力を受ける羽目になってしまった。
伊藤さんはとうとう左遷され、それに憤った
生産者組織「稲田稲作研究会」の仲間たちに
背中を押されながら、やがて農協を辞し、
一緒に「ジェイラップ」を立ち上げることになる。
それが90年代半ばの頃。

あのとき僕は、「こうなったら一蓮托生」と腹を決め、
「ゼッタイに伊藤俊彦を裏切るワケにはいかない」と、
固く心に誓ったものだった。

3.11の後は、必死で放射能対策に取り組んだ。
ジェイラップの敷地内には、いまも
大地を守る会が提供した測定機が生きている。

そして伊藤さんたちがこの10年、発展させてきたのが、
エネルギーの自給である。
とくにここ2,3年は、水田を活用した
「ソーラーシェアリング」に力を入れてきている。

 

日進月歩で進化する産地。
僕にとっては、今や年に一回は訪れないと気がすまない
場所と人、になっている。

ただ今回の訪問は、視察依頼をコーディネートしたことで
実現できたものである。
依頼主は、大地を守る会の自主サークルである
大地を守る・くらしからエネルギーを考える会
(旧「大地・原発とめよう会」、以下「大エネ」)から。
コロナ禍での行動制限によって延期が続き、
3年越しでようやく実現した企画だった。

 

須賀川のホテルにチェックインした後、
伊藤さんと一杯やる。
伊藤さんは冷蔵庫で3年寝かした「種蒔人」を
お店に持参してきた。
これがまたとてもイイ感じで熟成した
古酒になっていて、驚かされる。
「オレも挑戦してみよう」と言ってはみたが、
はたして毎晩冷蔵庫を開けながら、我慢できるか・・
はっきり言って自信がない。

翌日はタクシーでジェイラップに向かうつもりでいたが、
伊藤夫妻が車でホテルまで迎えに来てくれた。
大エネの視察団が到着する前に、見せたいものがあるらしい。

それは、新たに導入した「キッチンカー」だった。

この日は須賀川でも4年ぶりのお祭りがあり、
また10kmほど南にある矢吹町でもイベントがあって、
ジェイラップは2台のキッチンカーを発動させていた。
伊藤さんの案内で矢吹に向かう。

けっこうデカい規模の地域イベントだった。

 

歩き回って、ジェイラップのキッチンカー発見。

 

なんと、売り子をやっていたのは伊藤社長夫妻
(俊彦さんの息子・大輔さんと美江さん)だった。

しかもメニューがスゴい!

ホットドッグは自家製・国産・全粒粉パンに、
国産粗びきフランク。
自家製ドライフルーツでつくったドリンクが8種類。
使うハーブも、自分たちで育てている。
こんなキッチンカー、日本に何台あるだろうか。
僕は知らない。

俊彦さんに聞けば、
ハンバーガー屋さんからバンズ(具材をはさむ丸いパン)の
製造を頼まれることもあるのだそうだが、
自分たちで作れるキャパ以上のものは受けないと言う。
「それ以上やると余計な投資をしなきゃいけなくなってくるし、
本末転倒になってしまうので-」
「あくまで自分たちで作れる範囲までと決めている」と。
何とももったいない話のように思ってしまうが、
本業と自分たちのこだわりを大事にしたいという意思が
伝わってくる。

しかも、これで(会社として)稼ぐというよりも、
利益は若いスタッフたちにシェアさせている、と言うのだ。
結婚したばかりとか、家を建てて借金があるとか、
「そんな奴らに稼がしてやりたい」んだと。

なので、店を出すのは土日祝日のみ。
出店の度に、若いスタッフ同士で配置を決め、出動する。
こんなビジネスモデルも生み出してきていたとは・・・

これもまたジェイラップの進化を表していると言えるだろうか。

 

プレーンのドッグにフルーツミックスジュースをいただいて、
ジェイラップ本社に向かう。

イベント会場やサービスエリア等で食べる
ホットドッグとは別物の美味しさだった。

 

すみません。長くなったので、
ソーラーシェアリングの報告は次に。

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