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エビちゃん日記
- あんしんはしんどい日記
- 震災復興
藻谷(もたに)浩介さん。
1964年、山口県生まれ。現在(株)日本総合研究所調査部主席研究員。
経済アナリスト(分析家・評論家)と呼んでしまうと、
この方の実相がぼやけてしまうように思う。
とにかく平成大合併前の約3200市町村を
すべて回ったという経歴の持ち主。
僕が静岡県函南町に勤務地が変わったと報告した時、
間髪入れず「ああ、何だっけ、オラッチェ!」と返してくれた、
そんな人だ。
著書も色々とあるが、僕の本棚にあるのは、
『デフレの正体』『里山資本主義』『しなやかな日本列島のつくりかた』
の3冊。
他に増田寛也氏編著の『地方消滅』には対談が収録されている。
藻谷さんと知り合ったのは2012年。
農水省が関係省庁と一緒に取り組んだ
「地域食文化活用マニュアル検討会」で、
委員としてご一緒させていただいたのがきっかけである。
この検討会は2年続いた(13年は「日本食文化ナビ検討会」)。
その後はもっぱら、あちこちで講演を聞かせてもらってきた。
何しろ年間400の講演をこなすという忙しさで、
講演後に挨拶しておこうと楽屋を覗くと
「もう出られましたよ」と言われてしまったりするのだ。
1月に静岡で開かれた自然エネルギーのシンポジウムの際もそうだった。
そんな藻谷さんと「三陸鉄道をご一緒しませんか」
の案内メールが届いたのは、3ヶ月くらい前だったか。
前々から復旧した三陸鉄道に乗ってみたいと思っていたのと、
藻谷さんの解説を聞きながら三陸を回るという興味にひかれて、
すぐさま飛びついた。
4月18日(土)10時15分、東北新幹線・新花巻駅集合。
大型バスに乗り込んで、
『南三陸鉄道 藻谷浩介講演ツアー』が出発した。
補助席も使って満杯状態。
冒頭のアナウンスによれば、定員60名が募集から1日半で埋まって、
諦めきれない人が車でバスについて走ってきているとのこと。
のっけから “ 藻谷人気 ” 現象を見せつけられた格好だ。
「国にできないことを地方が先にやってしまう」
「生きてゆくための条件である水と食料とエネルギーはどこにあるのか」
「里山には金銭に換算できない価値がある」
「お金以外のものに守られながら、きちんと生きていく人間でありたい」
(各著書から)
3.11を経た人々が、心の中で求めているものに、
藻谷さんの言葉はフィットした。
しかも現状の閉塞感の底にある動きがクリアに抽出されたことで、
前を見る元気が与えられている。
僕らだってずっと言ってきたことなんだけど、
これを日本総研の主席研究員が、膨大なデータとともに
堂々と語ってくれたことで、人々が動き出した。
ちと悔しいが、認めざるを得ない。
新花巻から旧東和町、旧宮守村、遠野市と釜石街道を走り、
仙人トンネルを潜ったところで釜石市に入る。
その間、藻谷さんのガイドが続く。
地方に拠点を分散させる新日鉄の戦略やら
「遠野物語」に出てくるお化けの話まで・・・
いや実に、藻谷さんはサービス精神の旺盛な方である。
釜石の海岸線に近づくにつれ、震災の爪痕が現れてくる。
4年経っても、復興はまだ途半ばである。
今も仮設住宅に暮らす人たちがいる。
復興事業がここに暮らす人たちの願いに沿ったものなのか、
僕ら部外者には軽々に批評させない重たい力がある。
釜石から少し北上して、大槌町の旧庁舎を訪ねた。
6.5m の防潮堤を乗り越えて襲ってきた津波。
町長以下40人が犠牲になった。
時計の針はあの時間で止まっている(長針が切れている)。
この庁舎を保存するかどうかの議論が、今も続いている。
「教訓を忘れないためにも・・・」
「見るたびに思い出して、つらすぎる」
デリケートすぎて、町長も結論を下せないのだとか。
一部を残して、記念館で覆ってはどうだろうか。
復興の道のりも記録しながら。
みんな口が重くなって、ただ順番に手を合わせ
祈りを捧げる。
とにかく、忘れないこと。忘れてなならない。
いま進んでいることも、その先の姿も、
記憶に残してゆかなければならない。。。
釜石に引き返し、三陸鉄道南リアス線に乗り込む。
貸し切りのレトロ車両が用意されてあって、
これはクゥエート国から復興支援で贈られたものだ。
三陸鉄道は、明治時代の「三陸大津波」の被災により
ルートが再設定され、
全路線の半分以上がトンネルで、明かり区間も高台に線路が敷かれた。
しかし今回の津波はそれを凌ぐ規模となり、またも大被害を受けた。
復旧工事を終えて全面開通に漕ぎ着けたのは昨年4月、
丸3年の時間を要した。
また、三陸鉄道北リアス線(久慈~宮古間)と南リアス線(釜石~盛間)の
間を走るJR山田線の復旧工事が始まったのは先月のことで、
久慈から盛(さかり/大船渡市)まで一本でつながるのは、
2018年の予定である。
車両内でいただいたお弁当。
東京・恵比寿「賛否両論」笠原将弘氏監修による
『三賛六(さんさんろく)弁当』。
三陸に心を寄せ、訪れる旅人のために
「三鉄」ならではの弁当を作りたい・・・。
俺に任せろ!と料理人・笠原将弘がひと肌脱いで、
三陸産の海の幸いっぱいのレシピが出来上がり、
大槌町で被災した「六串商店」が心を込めて作った「三賛六弁当」。
ホタテのおかき揚げに雲丹(ウニ)入り卵焼き、
牡蠣と茎ワカメのしぐれ煮、鮭の炊き込みご飯・いくら乗せ、
メカブと野菜の和え物、鮑(あわび)の柔らか煮、
ちょろぎの酢漬け・・・しめて1,500円。
思いの込められた三陸の食。旅ならではの贅沢な食体験。
美味しかったです。ご馳走様でした。
途中、「恋し浜」という美しい名前の駅で、しばし休息。
ここを訪ねた人たちが、ホタテ貝にメッセージを託している。
「ガンバレ、東北!」
「幸せになるよ」
「一歩ずつ、共に歩んで!」・・・
皆さんの願いが叶いますように。
トンネルの合い間々々に静かな入江と集落があり、
満開の桜が里を華やかにしていて、
畑にいたおばあちゃんと少年が手を振ってくれて、、、
レトロ列車の旅は約1時間10分で終了。
14時20分、終点・盛駅に到着した。
次は気仙沼まで、ふたたびバスとなる。
続く。
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