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エビちゃん日記
- 食・農業・環境
10種類のメニューでどっぷりとオーガニックにはまる2日間!!
オーガニックがいよいよ “ 本気の時代 ” に入ります。
気合の入ったスローガンが前面に出たシンポジウムが開催された。
『第2回 とことんオーガニック・シンポジウム2015』。
4月24日(金)は渋谷のさくらホールで、
25日(土)は永田町・星陵会館での開催。
二日間にわたって実に盛り沢山のプログラムが用意されていたが、
僕は仕事の都合もあって、2日目だけ覗いてみることにした。
全編通して参加していないので、軽々しい論評は控えるべきではあるが、
従来の “ 有機農業運動 ” とここ数年のトレンドを融合させて
統合的なオーガニックの潮流を創り出そうという、
そんな意気込みを感じさせる画期的なイベントであったことは間違いない。
コーディネーターである徳江倫明(フードトラストプロジェクト代表)
大先輩の、今の思いが凝縮されたような企画だ。
今後の展開への彼自身の目論見も含めて-。
僕なりに本イベントの意義を整理させていただくなら-
まず第1に、
ほぼ半世紀になろうとする有機農業運動の原点を踏まえながら
改めて本質としての定義を整理し、
自然農法も自然栽培も〇〇農法も、仲間である!
と示したことだろう。
自然栽培の “ 奇跡のリンゴ ” で一躍時の人となった木村秋則さんが
ここに登場した(引っ張り出した?)意義は大きい。
ちなみにここで有機農業の定義として引用されたのは、
IFOAM(国際有機農業運動連盟)が2008年に
世界111ヵ国770団体の意見を集約してまとめたものである。
有機農業は、土壌・自然生態系・人々の健康を持続させる農業生産システムであり、
地域の自然生態系の営み、生物多様性と循環に根ざし、
これらに悪影響を及ぼす投入物の使用を避けて行われるものである。
本来、有機栽培 VS. 自然栽培という図式自体ナンセンスなことなのだ。
ようやく橋が架けられた。
ここはコーディネーターや企画者の尽力に敬意を表したい。
第2に、
放射能による土壌汚染という悲劇の経験から、
逆に有機農業の真価(力)が科学的に証明されてきたことが、
ちゃんと位置づけられたことを挙げたい。
有機農業による腐植の多い土壌はセシウムをしっかり固着し、
植物(農産物)に移行させない働きが強い、という事実。
パネラーで登壇した菅野正寿さん(福島県有機農業者ネットワーク理事長)
の言葉を借りれば、
「表土を作り、表土の力を借りる。まさに悠久たる農業の農業たる所以である」。
福島の有機農業者たちの執念と、哲学的ともいえるたたかいによって
獲得された知見。
有機農業の力を信じて福島に通った者として言っておきたい。
これは人類を救う発見である、と。
私たちは土と離れてはならない、
という思想を、もっと美しく、もっと体系的に、完成させたい。
その先に行くためにも-
第3は、
有機の世界を切り拓いてきた第1世代と若者世代を
ちゃんとコミュニケートさせようとしたことか。
当たり前のことのようだが、
思想や技術の正しい継承があってこそ
運動は社会化されていくことを忘れてはいけない。
パイオニアたちの理念や思想は本来、原理主義ではない。
ただ本質的な深い問題提起を含んでいるのである。
そこでせっかく掴んだ根本技術(思想とはそういうものだと思う)が
表面的なテクニックや理屈によって変質させられたり、
錆びていくのを、第1世代は恐れるのだ。
前日の若者たちのセッションがどうだったのか分からないので、ここまで。
第4に、
世界的潮流から眺めた、
日本の有機農業あるいは環境保全型農業を推進する上での
政策的欠陥が抽出された点が挙げられる。
学習院大学の荘林幹太郎教授が提示した
「レファランスレベル」(reference lebel)という概念。
何のための環境保全型なのか、それによって
どのようなメリットが国民全体に生まれるのか、
その基準となる起点をどこに置いて、
生産にどれだけのインセンティブを与えるのか。
要するに “ 国民が納得する(保護すべき)農業とは何なのか ”
について、曖昧なまま環境保全型農業が語られていること。
レファランスレベルが設定されないと、
健全な政策論争が生まれない。
農薬や化学肥料を減らしたことで生まれる価値を議論しても、
スタンダードがないために農家同士の理解が進まない。
運動的主張だけでなく、明確なメリットとプロセスを
国民に示すことによって、有機農業は発展する。
農業を保護すべき社会の責任と、
農家自身がやるべき社会的責任をマッチさせること。
倫理ある農業(食の生産)が社会を守る、
これを社会的共通認識にするためにも、必須の議論だと思った。
第5に、
有機農業に連携する異業種のパートナーにも
スポットライトを当てたこと。
埼玉県小川町の金子美登さん(霜里農場)といえば、
商品化を排除した有機農業運動の4番バッターとして
いつも紹介される方だけど、今回は
金子さんたちのグループが作ったコメを給与の一部として支給する
(正確には社内予約販売に対して給与から天引きするシステム)
住宅リフォーム会社「OKUTA」代表の山本拓己さんが、
金子さんに並んで登壇された。
環境に優しい家づくりを実践し、
新入社員には小川町での農作業体験が研修として課されている。
こういう方の存在が社会を動かしていく。
有機農業は人づくりにも貢献しているんだと。
ここに藻谷さんがコメンテーターとして登場するのも、
今日的トレンドと言える。
また会っちゃったね。
ロビーで人に囲まれてたので、今日も挨拶はパス。
要するに、
有機農業の様々な流れを尊重しつつ、
新しい社会づくりという目標に向かって連携しようということだ。
かつては有機農業の先進国であったはずの日本が、
中国にも韓国にも追い越されてしまった状況を冷静に見直し、
“ 1%の壁 ” を打破していくための方向を示そうとしたことにおいて、
実にチャレンジングなシンポであった。
本ブログでも紹介する機会が増えてきた
個性派スーパー「福島屋」の福島徹会長はじめ、
雑誌『オルタナ』編集長の森摂さん、
『マクドナルド 失敗の本質』著者・小川孔輔さん
など多彩な顔ぶれが揃って、
有機農業の明日を語り合った二日間。
中には意味不明な発表もあったけど、
時代をとらえたセッションになったと思う。
「大地を守る会」や「らでぃっしゅぼーや」あるいは
生協陣営など、これまでの常連筋はどうしたの?
意図的に排除されたのか、あるいは
「とりあえず今日は聞くほうで」ということなのか。
その辺はよく分からないけど、
ま、いずれにせよ今の我がポジションとしては
“ 王道を進むがよし ” ってことだね。
ただしマーケティング論だけでは革命は起こせないことも
押さえてはおきたい。
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