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エビちゃん日記
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今年の冒頭でご案内した「なつみずたんぼ」シンポジウム。
朝からの聴講は無理だったが、
最新情報だけでも得ておきたいと、午後から参加した。
会場は東京大学農学部。
「なつみずたんぼ」とは、
麦やナタネの収穫が終わった夏場(7~9月)、
ほ場に水を張って湿地状態にすること。
それが渡り鳥に休息地と餌場を提供する役割を果たす。
特に春と秋に日本列島を通過するシギ・チドリ類にとって、
春(北上)は田植えの頃の田んぼが、
秋(南下)は麦刈り後の田んぼが、
貴重な中継地となる。
「なつみずたんぼ」は新語である。
実は以前より、麦の連作障害を防止するために
あった技術である。
陸生(畑作)の雑草を抑制する効果もある。
その技術が、生物多様性を増大させ、
減少の一途をたどる渡り鳥を救っていた。
日本列島から干潟や内陸の湿地が消えていく中で、
農民たちが「麦を作り続けるために」やっていた
手間仕事が今、俄かに注目を集め始めたのだ。
大学の研究者だけでなく、
農林水産省から環境省まで、旗を振り始めた。
栃木県小山市立寒川小学校の生徒たちが
「なつみずたんぼ」の生き物調査を発表した。
小山市は、兵庫県豊岡市から全国に生息地を拡げつつある
コウノトリの飛来を願い、エサ場づくりを始めた。
「なつみずたんぼ」はその一環として、
53軒の農家が取り組んでいる。
小山市内にはラムサール条約に登録された渡良瀬遊水地もある。
「なつみずたんぼ」が始まって、水鳥の飛来が増えた。
子どもたちはその田んぼにどれだけの生き物がいるのか調べ、
ミジンコからトンボのヤゴ、カエル、クモ、ゲンゴロウ、ガムシ類など
20種類以上の小動物を発見し、
なぜ水を張ると増えてくるのか、考察も加えてまとめた。
立派な発表だった。
非栽培期間の水管理には課題も多い。
どんどん研究が進むのは喜ばしいことだけれど、
官も学も、支援が一過性のものにならないよう、
息長く付き合ってもらいたい。
農家が、当たり前に続けられるように。
そして、その当たり前の “ 農 ” が、
生命の土台を育んでいるという価値や外部経済効果を、
しっかりと伝えていってほしい。
「ふゆみずたんぼ」もそうだ。
たんに “ 渡り鳥を救うため ” に田んぼがあるんじゃなくて、
健全な農が生命を救う、その道筋を解いてほしい。
農業と国土のポテンシャルを忘れ、
お金(交換価値)の尺度だけで農業を語るTPPや
〇〇ミクスには、生命循環への視点が一片もない。
鳥たちが人間に求めているのは、エサ場の前に
この星の生命の体系を知ることのように思われる。
今回のシンポの案内を送ってくれた菅原孝明さん
(山形県三川町・庄内協同ファーム、マイクを持っている人)。
減反政策とたたかい、有機農業に挑み、
転作した麦作でも環境への配慮は忘れず、
「なつみずたんぼ」に到達してきた。
国はこういう人たちをないがしろにしないでほしい。
菅原さんたちは、有機JAS認証を取得し、
しかもその先を見つめ続けている。
日本野鳥の会にはぜひ、
こういう人たちの農産物を食べる運動もしてほしいと思う。
もちろんやっている人がいることも知ってはいるけど。
菅原さんは
「もうすぐにの、なつみずたんぼの大麦だけでつくった
麦茶(もちろん無農薬)ができるから」
と嬉しそうに語ってくれた。
楽しみに待ちたい。
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