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甲子園と「農家オブザイヤー」を考える。

2019/03/09
  • オイシックス・ラ・大地
  • 雑記その他
甲子園と「農家オブザイヤー」を考える。

この場で私的な話題を出して恐縮ですが、
私の母校(徳島県立富岡西高校)が21世紀枠で選ばれ、
春のセンバツ高校野球に出場することになりました。
学校創立123年、創部120年にして初の甲子園出場です。

甲子園なんて別レベルの世界だと思っていたので、
部員や関係者はともかく、ただの学校OBとしては
「悲願の!」というような心境ではないけど、
少々浮かれ気分にはなるもので、そこはお許し願いたい。

しかし「21世紀枠」といえども、それなりの
戦績がないと選ばれないわけで、いったい何があったんだ?
と思って昔の仲間に聞いたり調べてみると、
高校のある阿南市は10年くらい前から「野球の町あなん」として
地域活性化を図ってきたというのだ。
プロの公式試合もできる球場をつくり、他県からも
練習や試合目的でやってくるような環境を整えるなど、
そんな町ぐるみの活動やバックアップもあって、
年々強くなってきたんだと言う。

そこで唐突ながら思うのは、「文化の外部性」というか、
何かをキーワードとして外に開かれることの意外な力である。
あちこちで展開されるようになった
「アートによる町おこし」なんかもそうだけど、
あるテーマに魅かれ(その力によって)人が集まってきて、
外部との交流が生まれ、思わぬ価値(資源)の発見があり、
それが新たな力を生んだりする。
特にオフ・ミュージアム(美術館の外に出る)を
指向した現代アーティストたちが、
自己表現欲にとどまらず、その地の歴史や暮らしの
底に流れているものを翻訳し直す作品を編み出したとき、
その地に眠っていた魂に火がつく、ということがある。
アートによる文化の再生、これを侮(あなど)ってはならない。

もちろん成功例ばかりではない。
商業主義に牙を抜かれたり、地元住民にとっては
ただ目障りな物体や騒音に安寧を奪われる
といったことも往々にしてあったりするのも事実だ。

ま、いずれにしても、外から人が集まってくることは、
刺激であり、地元を磨き直す動機にもなり、
成長を促す力になる。
高校生の部活動にたいそうな意義づけをしては
可哀想だけど、町をあげて取り組んできた成果ではあるようで、
後輩たちには感謝も忘れず、おおいに
大海を楽しんできてほしいと願わずにいられない。
甲子園はコールドゲームがないので、
9回まで持つのかどうか、、、心配のほうが強いけど。

 

さて、農業の話。
実は農業も「文化」である。
いや文化のオリジン(根源)にある行ない、というべきか。

「大地を守る東京集会(オーガニックフェスタ)」
が開かれた翌3月4日(月)、
今度は品川区大井町の「きゅりあん」にて、
『N‐1 SUMMIT』が開催された。
こちらは「オイシックス」ブランドが
2004年から続けてきたイベントである。

プログラムは、藤田会長の挨拶の後、
群馬・野菜くらぶ代表の澤浦彰治さんによるゲストスピーチ、
そして成功事例として
北海道・ベジタブルワークスの佐々木伸さんによるプレゼン、
という形で進んだ。
澤浦さんは農業生産分野での実業家として貫禄も出てきて、
もはや間違いなく次世代リーダーの一人となった。
いっぽう佐々木伸くんは、
スノボー青年たちに働く場とやりがいを与えるなど、
若手らしくアグレッシブに経営拡大を続けている。
大地を守る会では母上の美智子さんからの付き合いで、
いやあ立派になって・・・いや、大丈夫かぁ
という親心的気分にもなったりして。。。

続く参加者によるグループディスカッションでは、
生産者同士で「それぞれの課題をどう克服するか」
について話し合った。
僕のグループに、静岡で桜海老を出荷している方がいて、
いま駿河湾の桜海老は資源枯渇の危機にあって禁漁中のため、
年間売上で一億円もの減収となって、
辞める人も出始めているという報告があった。

この「課題」は難しい。
一人の努力で解決できるものではなく、さすがに頭を抱える。
こうなったら桜海老で商売している業者みんなの力で、
「桜海老」という地域資源を守るプランを作って
社会に宣言する(資源回復まで別なもので買い支える)、
ということを提案したけど、さて、
どう受け止めてくれただろう。
口で言うのは容易(たやす)いけど、ハードルは高い。
「(経営)資源を守る」と「(経営)維持」
(そのためには持続的「儲け」も必要)を両立させる
モデルプランを、静岡から何とかつくってほしいと思う。

 

そしてメイン・イベントとなる
「農家・オブザイヤー」の発表。

消費者からの投票(お褒めの声やレビューの数)で、
北海道から九州までの各地区で選ばれた生産者と作物。
さらにその中で地区賞と金賞が選ばれる。

昨年は合併によって初めてノミネートされた
「福島わかば会」のきゅうりが選ばれた。
今年は愛知県の(株)スマートフォレストのトマトが
栄冠をゲット。

流通・販売の立場からの「表彰」というイベントには
異論がつきものだけれど、
これは消費者からの声(の数)を基にしているので、
生産者の励みにはなるはずだ。素直に拍手を送りたいと思う。

しかし、願わくばその先にいきたい。

「受賞」への感謝の言葉だけでなく、
作り手の誇りを持ってメッセージを送ろうじゃないか。

あなたの命を守るための営みを黙々としていること、
農は国土と「文化の土台」を支えていること、を。
日々「消費」とともに消えていく「私の作品」は、
あなたやあなたの家族の身体とつながっていることを。
それは紛れもなく、根源的な文化運動であるはずだ。

イベントは「消費」(商業目的)であったりする。
しかしフィールド(現場)で鍛えてきた者こそ
本来の主役であり、彼らには、主催者の意図を越えて、
潜んでいた価値を可視化させる力がある。

躍動し、受け手が元気になること。
それは潔く、それでいいのかもしれないけど、
言葉を添えたくなるのは
流通で生きてきた者の性(さが)でしょうか。。。

いや待て待て。
それを伝えるのが俺たちの仕事なんじゃないか。
表現や仕掛けに試練を与えるべきは、己れか・・・
イベントを劣化・陳腐化させないためにも。

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