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幻の銘酒『江川酒』再臨!

2024/04/21
  • 雑記その他
幻の銘酒『江川酒』再臨!

4月20日(土)。
歯医者にかけられた麻酔も醒めやらぬ
午前11時。

伊豆の国市韮山(にらやま)にある
「代官屋敷」2階のオーガニック食堂
食とせいかつ いっさい」さんを訪ねる。

オープン時に本ブログでも紹介
させていただいたお店である。

 

二週間ほど前に、
この食堂を運営する戸田ご夫妻から連絡があり、
日本酒イベントへのお誘いを受けた。

江戸時代まで造られていた幻の銘酒
『江川酒』(えがわしゅ)を再現した日本酒の
今年の蔵出し記念イベントをやるので
来ませんか、というのだ。

「幻の銘酒」
「いにしえの美酒」・・
なんと香(かぐわ)しく、ロマン溢れる言葉。
エビを釣るには最高のエサだ。

歯の治療の直後だ‥‥と一瞬ひるんだが、
二つ返事で「行きます!」と答えた。

 

韮山代官・江川家については、
昨年11月に紹介させていただいたので
割愛するとして、
ここで室町時代から江戸・元禄時代まで
造られていたお酒がある。

室町から戦国の世へと移ろうとする頃。
下剋上の申し子・北条早雲が
当地に攻め入った際に、気に入って
「江川酒」の名を与えたと言われる。

その後、信長も、秀吉も、この酒を愛で、
戦勝祝いや贈答にはこの酒を利用した。
秀吉晩年の「醍醐の花見」にも供されている。

そしてまた、家康も呑んだ。

「汝が井軽水にて酒に叶い、
 (この井戸は軟水で酒造に適し-という意か)
 養老の酒ともいうべきもの」と絶賛し、
野菊を摘んで「これを江川の家紋とせよ」
と渡した。
以後、江川家の家紋は「井桁に菊」となった。

以後代々、徳川幕府に献上されたが、
元禄の時代に幕府の財政難から
米をすべて供出することとなって、
酒造りが途絶えた、とのことである。
(出展:橋本敬之著『江川家の食卓』より)

 

その酒がなんと、330年余の時を経て
4年前(令和2年)の5月、
醸造法を詳細に残した図入りの文献、
その名も「江川家御手製酒之法書」
が発見されたのである。
マニュアルが残ってた!ってワケだ。

上記出典書の著者、橋本さんは
「江川酒が復活する日のために
書き残したもの」だと記している。

 

その年から「江川酒」再現計画が始まる。
醸造は伊豆に唯一残る酒蔵
「万代醸造」に依頼された。

最初の年は静岡の酒造好適米
「誉富士」を使用したが、
さすがに酒造好適米など当時はなかったと、
翌年から飯米用品種に切り替え、
6月の手植えから始まり、
除草剤も使わず手で草を取るなど
無農薬栽培で収穫まで漕ぎつけ、
鎌で刈り、天日で干した。

 

そんな物語を背負って、
この日が4回(年)目の「蔵出し」となる。

会の主催は「江川英龍公を広める会」。
料理も「いっさい」さんにより、
当時の江川家の献立が再現された。

 

開封を待つ2024年産「江川酒」。

 

その前に、関係者の挨拶が続く。
江川家42代当主、江川洋氏。

伊豆の国市の市長さんも挨拶されたが、
眼の前の酒が気になって、記憶なし。
覚えているのは、
岸田首相が当地に来られた際に
江川酒を3本差し上げたが、
お礼も感想も返ってこなかった、
というエピソードだけ。

こちらが万代醸造杜氏の伊奈静夫さん。

図解付きの手順書とはいえ、
昔の道具に製法、
しかもマニュアルは「古文書」である。

元造り
一 白米壱斗 但、水にひたし候節
米壱斗之内米三合程飯にたく也
一 白米糀五升
一 水壱斗 但、三升ほどハ四日程ひたし候、
水をすくに入て都合壱斗の積
右白米をよくとぎ四日程水にひたし置、
右の米壱斗の内を水にひたし候節、
米三合ほど飯にたき、小ざるにかるく盛り、
右水にひたし候米の内へゆり入て置、
尤もざるの縁へ水のひたひた付候程にして置、
~ ・・・・・・

読み込み、理解した杜氏と、
作業を行なった蔵人たちには、
脱帽するしかない。

しかもなお驚くべきは、
この「江川酒」製法は、
当時一般的だった濁酒(ドブロク)ではなく、
清酒であり、かつ相当に米を削った、
今でいう吟醸酒クラスのものであった
ということだ。

「米はへり候にかまわず上精(はく)につくべし」
 (米の減り具合に構わず徹底して磨け)
「米のつきよう(搗き方)そまつ(粗末)なれば
 酒にごり申し候」

江川家恐るべし、と言わざるを得ない。

 

待ちに待った乾杯! のあと、
一年前のものも飲み比べ用に出された
(下の写真・左が去年もの)。
しかし僕は車なので、ただ舐めるだけ。
(しっかり買って帰る。)

新酒には、独特の深い酸味があった。
「フルーティ」と表現する人もいたが、
ちょっと違う気がする。
この濃醇な香味を「コク」というのか・・

いっぽう一年経った(若い)古酒は、
深みはそのままながら、カドが取れて
まろやかになった感じ。
こういうのを「ふくよか」と言うのか、
洋酒だったら「フルボディ」とか?
ああ、こういう時の表現力が欲しい。

ただ「旨いね」とか「不味いね」とか
だけで、ボーっと飲んでんじゃねぇよ!
もっと勉強しろ!
と自分を叱ってみるが、まあきっと
変わらないだろう。

 

料理の写真も載せないといけないのだが、
疲れたので、いや、
飲まずにいられなくなってきたので、
次回に。すみません。

では、一献。。。。

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